バリ島西部・ヌガラの伝統芸能として伝わった巨大竹筒打楽器。1チームが14台で構成されたアンサンブル演奏。最も大きな竹は長さ3m、直径18cm、肉厚3cm、この竹の音は人間の耳が聞き取ることができる最も深い超・重低音を発します。竹の音は会場の建物や木、人間と反響し合い一体となり幽玄な舞台空間を表します。4音階の竹打楽器は世界でもこのジェゴグだけです。4つの音階は東西南北の方位を意味し、それぞれに神が宿り、その中心にシバ神があるといいます。竹の音にも、楽器の意匠にもバリ・ヒンドゥ教の宇宙観が具現化された大変珍しい音楽です。 ジェゴグは、オランダ植民地時代、竹が武器になることから演奏が禁じられ一度途絶えましたが、インドネシア独立後、スウェントラ師(スアールアグン団長)によって復興され、師の指導によりヌガラの村々に広まり現在約52チームがあります。
私たちの生きている世界には、1から11までのバランスがあります。 8つの方角と。保護を司るウィスヌ神、想像を司るブラマナ神、そして破壊を司るシウ"ァ神の3神の計11のバランスで成り立っているのです。そして、男と女、左と右、天と地、陰と陽などのバランスが崩れることによって、この11のバランスに異変をきたし、天変地異が起きたり、世界にさまざまな争いが生じたりすると考えられています。 バリの伝統芸能は、すべてこのバランスを重視して演奏されます。なぜならバリの音階は、人びとが神に捧げる祈りから生まれたものだからです。つねに美しく、楽しい音楽には、感謝の気持ちと祈りが込められているのです。 ジェゴグによって奏でられる音階は4つですが、そのぞれの音は「方位」と「色」を表し、同時にそれぞれの神を宿しています。
そして4つの音が一体になったものが、方角の中心、すべての色を含む混合色、シウ"ァ神=守護神、を表すのです。 うねる重低音は大地から沸き立つ音、甘えるように誘いはねる高音、絡み合う4音階は集い、激しくぶつかりせめぎあい、次第に調和とバランスへと導かれていきます。ジェゴグの音は縦の波動となってその場にあるすべての魂にダイレクトに伝わります。野外であれば、そこにある土、木や植物、建物、その空間全部と、劇場の中では、反響する音をも巻き込むように、演奏する土地、場所にすでにあるタクスゥー(目に見えないパワー)と響働するのです。